Vol.114『片蔭をもとめて歩く日のコンサート』



昨年秋からドッグ入りしていたピアノが弦の張替えを終えて帰ってきます。
一段と元気になったピアノを新見フェイギン浩子さんに弾いてもらえるのが
とても楽しみです。
プログラムが昼の部と夕の部で別の曲も用意してくださいました。

★2022年6月23日(木)

昼の部13:00開演(12:30開場)60名様

夕の部16:30開演(16:00開場)60名様


★参加費 3,000円

 

★出演 ドミトリー フェイギン チェロ
    新見フェイギン 浩子 ピアノ



ごあいさつ

この度は、桜の庄兵衛さんのコンサートに出演させていただく事になり大変光栄です!

 皆様もよくご存知の堀江ファミリー三兄弟妹の牧生さん、詩葉さんは、私たち夫婦の生徒さん。

さらに、去年、私・新見フェイギン浩子は次男の恵太さんと、初めて桜の庄兵衛さんで共演いたしました。

とても素晴らしい空間に感激しておりましたところ、今回は主人ドミトリーと弾かせていただく事ができて楽しみに

しております。

 ドミトリーはロシア出身の音楽家ですが、父や祖父はウクライナの第二の都市、ハリコフ出身だったのです。風光

明媚なハリコフも今は焼け野原になってしまいました。私達は、あの美しいキエフ(現在キーウ)でも演奏しました

。ウクライナ人もロシア人も近い民族であり、このような悲惨な戦争が一日でも早く終わって欲しいと祈るばかりで

す。この悲しい気持ちや平和への祈りをこめて演奏いたします。

お呼びいただいた桜の庄兵衛さまに感謝いたします。

          ドミトリー フェイギン   新見 フェイギン 浩子

 

★プログラム

 

昼の部 

バッハ 無伴奏チェロ組曲6番 二長調       

ブラームス 8つの小品から            

休憩                        

ブラームス チェロとピアノソナタ第一番 op38   

ファリャ  スペイン民謡組曲            

マルティヌ ロッシーニのテーマによる変奏曲 

夕の部

バッハ 無伴奏チェロ組曲4番変ホ長調

シューマン 幻想小曲集 op73

休憩

ブラームス チェロとピアノソナタ第一番 op38

ファリャ  スペイン民謡組曲

マルティヌ ロッシーニのテーマによる変奏曲

“片蔭を求めて歩く日のコンサート”にて       ピアニスト  篠原美樹子

 

この日の演奏者ドミトリー・フェイギンさんと新見・フェイギン・浩子さんは、「桜の庄兵衛」さんでたびたび演奏されている「堀江トリオ」の先生でもある方です。おふたりのこちらでのコンサートは初めてでいらっしゃるということで、楽しみに演奏を待ちました。

 

まず、チェロのソロによるバッハ『無伴奏組曲第6番』が深い音色で紡がれます。あとで伺うと、バッハの頃に使われていた弓(バロックボウ)で奏でられていたそうです。それにしても、弦を抑える左手、大きいなぁ。

 

次の『小品集』はブラームスの歌曲からのチェロ版。その2曲目で、50年前に友人の歌に私がピアノ伴奏をした懐かしい旋律が演奏されたけれど題名を思い出せず、帰宅後YouTubeで調べると『メロディーのように』と判明。5曲目『子守歌』では、子供の柔らかい髪をそっと撫でるようなチェロの音色が忘れられません。

 

休憩の前に、「堀江トリオ」のMC役、堀江アナウンサーが登場され場を和ませてくださいます。「桜の庄兵衛さんは江戸時代からの建物です」と紹介されると、フェイギンさんが「私のチェロも古いです、江戸時代です」とおっしゃって、そのような名器(1750年頃製作)を間近で聴ける幸せを感じました。

 

後半は同じブラームスでも『ピアノとチェロのためのソナタ第1番』という、ちょっと重いプログラムに。第1楽章の冒頭では、深みから立ち現れるチェロの低く息の長い旋律に、ピアノがリズムの裏拍をそっと刻みながら寄り添い、そのひそやかな音色に惹きつけられました。作曲者は30歳を過ぎたばかりなのに、こんな憂鬱や悩み、憧れなどを描けるのはどうして?早熟なのか、その時代は生きるのがより困難だったからか?フェイギンご夫妻の演奏を聴くとそんなことまで考えてしまいます。第3楽章チェロとピアノは追いかけっこのようでスリルと迫力満載、終わると大きな拍手が湧き上がりました。

 

ファリャの『スペイン民謡組曲』が始まったのが2時頃だったか。ガラス戸越しの庭の木々に強い日差しが当たって、光と影の交錯するスペイン民謡の演奏にピッタリ。静かにむせび泣くような歌や、一転してフォルテで連打する打楽器のようなピアノの上で、チェロが力強く、でも甘いの音で歌いあげる場面、そして鋭いピツィカートが印象的な終曲はこれぞスペイン、思わず「オーレ!」(と言うのは我慢したけれど・・)

 

プログラム最後になると、マルティヌー『ロッシーニのテーマによる変奏曲』でぐっと現代的になり、これは初めて聴くけれど演奏も難しそう!華やかで大盛り上がりのフィナーレでした。

 

このような歴史ある建物で素晴らしい演奏を体験させていただけましたことに感謝いたします。どうもありがとうございました。